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実務・資金活用

1540(金の果実)の現物転換:
ETFのゴールドを実物で受け取る手続き・費用・税金

読了 約10分

公開日:2026/08/02

純金上場信託「金の果実」(1540)は、保有する受益権(じゅえきけん)を金地金の現物と交換できる制度を持っています。この記事では、その手続きの単位と費用、そして見落とされやすい税務上の構造を、受託者の公開情報をもとに整理します。

1540(金の果実)の現物転換:ETFのゴールドを実物で受け取る手続き・費用・税金

1. 1540には、現物転換の制度がある

ゴールドのETFを持っていて、最後は実物として受け取れるのだろうか、と考えたことのある方は多いと思います。

1540(純金上場信託・金の果実)には、その制度があります。投資家が取扱証券会社を通じて申し込み、一定の口数の受益権と引き換えに、改鋳(かいちゅう)された金地金を受け取ることができます。

世界のゴールドETFには、現物償還が大口のまとまった単位に限られ、事実上は指定参加者である機関投資家向けとなっているものや、そもそも現物転換の制度を持たないものがあります。個人が1kgという単位から申し込める設計は、その中では珍しい部類に入ります。

以下の数値はすべて、三菱UFJ信託銀行の公式ページ(「転換(交換)手続きの詳細」および「投資家の皆さまにご負担いただく費用」)からの引用です。参照日は2026年8月1日です。

2. 転換の実務:単位・口数・費用

申込単位と必要口数

小口転換の申込単位は、1kgから5kgまで、1kg刻みです。必要な受益権の口数は、公式ページに「6月3日現在」として次のように示されています。

転換量必要な受益権口数(金)
1kg1,071口
2kg2,141口
3kg3,211口
4kg4,281口
5kg5,351口

重要なのは、この口数が固定されていないことです。

受益権一口あたりに相当する貴金属現物の重量は、日々減少していくことになり、その結果として、転換(交換)で受領する貴金属現物の重量に相当する受益権の口数は日々変動していきます

三菱UFJ信託銀行「『金の果実』シリーズ 転換(交換)手続きの詳細」

信託報酬(2026年3月31日現在で年率0.440%、税抜0.40%)などの費用が信託財産から支弁されるため、一口が裏付ける重量は少しずつ減っていきます。必要口数は申込受付日の夕刻に算出されるため、申込の時点では確定しません。

費用

項目金額(税込)
事務取扱手数料(転換取扱手数料)申込み一回あたり 5,500円
金地金の改鋳費用1kgあたり 22,000円
送料1kg 21,590円/2〜3kg 21,990円/4〜5kg 25,940円
消費税および地方消費税相当額転換価格の10%相当

このほか、取扱証券会社の独自手数料がかかります。

受付できない日

公式ページの記載は次のとおりです。

取扱証券会社

小口転換の取扱証券会社は、三菱UFJ eスマート証券(公式ページの表記は旧社名のカブドットコム証券)、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SBI証券です。なお、実需家向けには別途「大口転換」の制度があり、対象となる口数も指定証券会社も異なります。

公式の計算例(金1kg・2026年3月31日付数値による試算)

公式ページの計算例です。

項目金額計算式
(1) 消費税2,395,110円{1,000.673g×23,935円}×10%(円未満切捨)
(2) 転換取扱手数料(税込)5,500円定額
(3) 貴金属地金送料(税込)21,590円1kg時の金額
(4) 改鋳費用(税込)22,000円金1gあたり20円×1,000g×1.10
(5) 1g未満端数売却金額(税込)17,718円{0.673g×23,935円}×1.10
ご請求金額(税込)2,426,482円(1)+(2)+(3)+(4)−(5)

※証券会社への支払手数料は含まれていません。

計算例で使われている1,070口(2026年3月31日付の数値)が裏付けるのは、1,000gちょうどではなく1,000.673gです(前掲の表の1,071口は6月3日現在の数値で、時点が異なります)。1kgの地金を受け取り、余った0.673g分は売却されて請求額から差し引かれます。そして支払う現金2,426,482円のうち、2,395,110円は消費税です。

3. 税務上の構造:これは「引き出し」ではない

現物転換は、預けてあった自分のゴールドを引き出す手続きではありません。公式ページは、転換を「受託者から転換を行う投資家に貴金属の地金を販売したこと」と同一に扱うと説明しています。つまり、受益権を譲渡し、その対価で新たに改鋳された地金を購入する取引です。だからこそ消費税がかかります。これは受託者が設けた費用ではなく、地金の販売という取引に税法が結び付けた帰結です。

ここから、二つのことが導かれます。

第一に、譲渡損益がその場で実現します。 公式ページは、転換価格から投資家の取得価額と転換時手数料を差し引いた額が「有価証券の譲渡益」として課税対象になると説明しています。転換した年に、申告の対象となる損益が発生します。含み益を抱えたまま実物へ移すことはできません。

第二に、支払った費用は消えません。 受け取った金地金の取得価額は、公式ページによれば「転換価格+改鋳費用相当額+運送費用相当額+消費税相当額」です。消費税も改鋳費も送料も、将来その地金を売却するときの取得価額に算入されます。受託者が発行する計算書が、その証明になります。

なお、受け取った地金を売却する際の譲渡所得の計算方法は、公式ページによれば保有期間が5年超か5年以下かで異なります。また、受益権の譲渡益に係る税率として、公式ページには2037年12月31日まで20.315%(所得税15.315%〔復興特別所得税を含む〕+住民税5%)と記載されています。

公式ページも、税金の取扱いは税務専門家に確認することを勧めています。

4. 誰にとって現実的か

同じ手続きでも、立場によって実際の負担は変わります。

課税事業者(本則課税)の法人の場合、転換時に支払う消費税は仕入税額控除の対象になります。負担として残るのは、事務取扱手数料・改鋳費用・送料と証券会社の手数料です。

免税事業者や個人の場合、消費税は控除されません。取得価額に算入されるため将来の売却時には反映されますが、それまでは資金として立て替えた状態が続きます。先の計算例で言えば、1kgあたり約240万円です。

資金繰りの点では、公式ページに特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、転換時に推定譲渡所得相当額も必要になる旨の記載があります。消費税とあわせ、申込の時点で現金を用意しておく必要があります。

なお、法人が金地金を一定額以上取得した場合には、消費税の事業者免税点制度や簡易課税制度の適用が一定期間制限される規定があります(いわゆる200万円ルール)。転換で地金を受け取る場合も取得にあたるため、該当しうる論点です。詳細は別記事で扱います。

※本節のうち、仕入税額控除および事業者免税点制度等に関する記述は、受託者の公開情報ではなく、消費税の一般的な制度についての当社の整理です。個別の適用は取引の内容や事業者の状況によって異なりますので、必ず税理士等の専門家にご確認ください。

5. 受益権と物権:個体はいつ生まれるか

1540を保有している間、投資家が持っているのは受益権です。特定のシリアルナンバーが付いた、この一本の金インゴットを持っているわけではありません。信託財産としてのゴールドは存在しますが、投資家の権利は、その全体に対する受益権として表されています。

現物転換をして初めて、改鋳された個体としての金インゴットが生まれます。シリアルナンバーが付き、ブランドが決まり、特定できる一本になります。この瞬間に、権利の性質が変わっています。

受益権として持つのか、個体として持つのか。どちらが優れているという話ではなく、何を差し出して何を受け取っているかが違う、という話です。同じ構造の違いは、特定保管と消費寄託にも現れます。

転換前に確認する6項目

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出典

免責

本記事は、受託者が公開している情報をもとに手続きと費用を整理したものであり、税務助言ではありません。制度の内容や数値は変更される場合があります。実行前に、最新の公式情報をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。

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