2025年から2026年前半にかけて、ゴールドの価格は大きく上がり、そして下がりました。この記事では、その事実を数字で確認したうえで、価格の変動とどう付き合うかを、保有の目的別に整理します。相場の見通しは扱いません。

何が起きたか
国内の店頭小売価格(税込)で見ます。2025年1月7日は1グラム14,776円でした。そこから上がり続け、2026年3月3日に29,969円をつけます。1年あまりで約2倍です。その後は下げに転じ、2026年6月25日には23,094円まで戻りました。3月の高値から約23パーセント下です。
ドル建てのLBMA金価格(PM)の四半期平均で見ると、景色が変わります。2025年第2四半期は1トロイオンス3,280.4ドル、2026年第1四半期は4,872.9ドル、第2四半期は4,506.3ドルでした。第2四半期は前の四半期から8パーセント下がり、前年の同じ四半期からは37パーセント上がっています。
同じ相場でも、円建ての高値と安値で比べれば約23パーセントの下落、ドル建ての四半期平均で比べれば8パーセントの下落です。どの価格を、どの断面で見るかによって、変動の大きさは違って見えます。
なぜ動いたのか
事後に「この要因が何パーセント効いた」と切り分けることはできません。指摘されている要因を並べておきます。
ワールド・ゴールド・カウンシルによれば、2026年第2四半期は中央銀行と公的機関が288.9トンを買い越し、前年の同じ四半期を62パーセント上回りました。一方、上場投資信託(ETF)からは44.8トンが流出しています。その背景として、価格の下落、北米を中心としたインフレと金利の見方の上方修正、米ドルの強含みが挙げられています。金インゴットとコインの需要は307.1トンで前年並みでした。同社はこれを、記録的に強かった2四半期(直前の第1四半期は476.8トン)のあとの、通常の水準への復帰と説明しています。
要因は複数あり、互いに打ち消し合うこともあります。先のことは分からないという前提で、自分の側の設計を決めるほうが現実的です。
価格の変動と、どう付き合うか
1. 何のために持っているかを、先に決める
値上がりを狙って持つのか、資産の一部を別の形にしておくために持つのかで、価格の変動が持つ意味は変わります。
資産の保全を目的とした長期の保有なら、日々の価格を追う必要はありません。四半期に一度、資産全体に占める比率が想定から離れていないかを確認すれば足ります。逆に、近いうちに使う予定の資金をゴールドで持つと、使う時期と価格が下がった時期が重なることがあります。保有目的を決めるとは、実質的には「いつ現金に戻す必要があるか」を決めることです。
2. 取得のタイミングを分けるという考え方
一度にまとめて取得すると、その1日の価格が取得価格のすべてになります。複数回に分けて取得すれば、取得価格はその期間の平均に近づきます。純金積立が採っているのはこの考え方です。
これは価格を有利にする方法ではなく、1日の価格に結果を委ねないという設計上の選択です。回数が増えれば手数料と手間も増えます。どちらが適しているかは目的によります。
3. 担保に使う場合
ゴールドを担保に資金を借りる場合、価格の変動は借り手の側のリスクになります。
担保の評価額に対していくらまで借りられるかの比率を、LTV(掛け目)と呼びます。評価額の全額を借りられることはなく、この差が価格下落時の緩衝になります。価格が下がれば評価額も下がり、当初のLTVの水準を超えます。このとき、追加の担保を差し入れるか、一部を返済することを求められる仕組みが一般的です。
2026年前半のように高値から2割動く局面では、この仕組みは実際に作動します。借入れの前に確認すべきことは3つです。担保の評価にどの価格を使うか。どの水準で追加担保になるか。通知から対応までにどれだけの猶予があるか。いずれも契約書に書かれているはずの事項です。
なお、担保の処分の扱いは、提携する金融機関の方針によります。KINGOTでの担保設定と担保解除を伴う資金調達は2027年以降の提供を想定しています。
4. どの価格を見ているか
「ゴールドの価格」は一つではありません。ドル建ての国際指標、国内の店頭小売価格、店頭買取価格、先物価格は、いずれも別のものです。担保の評価や決済に使うなら、どの価格の、いつの断面を使うかが、あらかじめ決まっている必要があります。
価格は常に存在するわけでもありません。多くの市場は週末と時間外に閉まります。2026年7月19日から、CMEグループは1オンス金先物を24時間・週末も取引できる形に移行しました。最初の週末の取引は約15,000枚、想定元本で約6,000万ドルです。週末にも価格が立つようにはなりましたが、平日の厚みとは差があります。
もう一つは、一つの提供元に頼るリスクです。その提供元が止まったとき、あるいは誤った値を出したときに、それをそのまま使う仕組みだと、資産の評価も決済も一緒に誤ります。
私たちは、複数の価格ソースを突き合わせ、乖離があれば検知する仕組み(Oracle Guardian)を稼働させています。目的は価格を当てることではなく、記録に使う価格が壊れていないことを確かめることです。
チェックリスト
- 保有しているゴールドを、いつ現金に戻す必要があるかを決めていますか
- 取得した日付・数量・価格の記録が残っていますか(売却時の税額の計算に必要です)
- 担保に使う場合、評価に使う価格・追加担保となる水準・猶予期間を契約書で確認しましたか
- 資産の評価に使っている価格が、どこの、いつの価格かを説明できますか
- 価格が2割動いたときに何をするかを、動く前に決めていますか(何もしないと決めることも含みます)
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出典
- World Gold Council, Gold Demand Trends Q2 2026(2026年7月)https://www.gold.org/goldhub/research/gold-demand-trends
- 田中貴金属工業株式会社「過去の金価格」https://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/d-archive-gold.php
- CME Group, Globex Notice(2026年7月13日)https://www.cmegroup.com/notices/electronic-trading/2026/07/20260713.html / 同社プレスリリース(2026年7月27日)https://www.cmegroup.com/media-room/press-releases/2026/7/27/traders_drive_strongdemandinfirstweekendofcmegroups247goldfuture.html
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