法人でゴールドを保有すると、決算のたびに時価評価が必要になるのでしょうか。多くの場合、答えは「不要」です。ただしそれは保有目的をどう主張するかで決まるのではなく、独立したトレーディング部署が売買しているかどうかと、取得したときの経理処理で決まります。

1. 原則は取得原価。期末に時価評価はしない
法人が金地金(きんじがね)を取得した場合、原則として取得原価で資産に計上し、期末に時価との差額を評価損益として計上することはありません。価格が上がっても、その含み益に法人税がかかるのは、売却などによって損益が実現したときです。
これはゴールドが特別扱いを受けているということではありません。実現したときに課税するという、法人税の基本的な考え方がそのまま当てはまっているだけです。
2. 例外は「短期売買商品等」。判定は取得時の形式で決まる
法人税法61条は、「短期売買商品等」について、期末に時価評価を行い、評価損益を益金または損金に算入すると定めています。ゴールドはこの対象になり得る資産です。
では、何が「短期売買商品等」に当たるのか。その範囲は法人税法施行令118条の4に定められており、次のいずれかに当たるものとされています。
- 専担者(せんたんしゃ)売買商品であること。 法人税基本通達2-3-66は、これを「いわゆるトレーディング目的で取得した商品をいうのであるから、法人がトレーディング業務を日常的に遂行し得る人材によって設置した独立の専門部署(関係会社を含む。)により当該商品の売買がされている場合の当該商品がこれに当たることに留意する」と述べています。
- 取得の日において、短期売買目的で取得したものである旨を、財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載したものであること。 この記載の方法は法人税法施行規則26条の7に定められており、短期売買目的で取得した資産の勘定科目を、それ以外の資産の勘定科目と区分することによって行うものとされています。
ここで押さえておきたいのは、どちらも取得の時点の外形で決まる基準だという点です。「値上がりしたら売るつもりだった」という内心の目的や、結果として短期間で売却したという事実によって、後から該当することになるものではありません。この点は通達の側からも補強されています。法人税基本通達2-3-67の注書きは、短期的に、または大量に売買を行っていると認められる場合であっても、施行規則26条の7による勘定科目の区分をしていないものは、2の「帳簿書類に記載したもの」には該当しない、としています。
逆に言えば、独立したトレーディング部署を持たず、帳簿でも勘定科目の区分をしていない法人が資産保全のために取得したゴールドは、上の2つのいずれにも当たらない、という整理になります。
もっとも、これは一般的な整理です。実際の判定は各社の体制や記帳の実態によって変わり得ますので、自社の処理については顧問税理士にご確認ください。
3. 同じ仕組みの裏側:下落しても評価損は原則計上できない
期末に時価評価をしないということは、上振れも下振れも損益に出ないということです。金相場が大きく下がった期であっても、原則として評価損を損金に算入することはできません。
つまり「含み益に課税されない」と「含み損を先に落とせない」は、別々の話ではなく同じ仕組みの表と裏です。ゴールドを財務戦略に組み込む場合は、上がっても下がっても損益には出ない、というこの対称性を前提に考えることになります。
4. 会計監査を受ける会社の場合
法人税の取扱いと会計上の取扱いは別のものです。ゴールドを裏付けとするETFの受益証券は、会計上はその他有価証券として時価評価され、評価差額が貸借対照表に表れます。これに対して現物の金地金は、会計上は棚卸資産の評価に関する会計基準(企業会計基準第9号)の射程に入る可能性があり、保有目的によって処理が変わります。一方、資産保全のための長期保有であれば固定資産の「投資その他の資産」として取得原価による計上が基本となり、金相場の変動が毎期の財務諸表を動かすことはありません。
ただし、原価で計上していれば何もしなくてよい、ということではありません。時価が著しく下落した場合には、会計上の減損(強制評価減)の要否を検討する必要が生じ得ます。判定の基準は会社の会計方針に関わるため、顧問の会計士・税理士とあらかじめ確認しておくのが安全です。
5. この整理を支えているのは、取得の記録
ここまでの整理は、いずれも「取得したときにどう処理し、何を残したか」で決まります。裏を返せば、記録が残っていなければ説明ができません。
必要なのは、取得日・取得価額・重量・本数、そして個体を識別する情報です。金インゴット(金の延べ棒。「地金(じがね)」とも呼ばれます)には1本ずつ固有のシリアルナンバーがあり、これが個体の記録の起点になります。あわせて、取得の意思決定を行った稟議書や取締役会議事録に保有目的を書き残しておくことにも意味があります。税務調査で問われるのは、後からの説明ではなく、そのときに残された記録だからです。
KINGOTは、法人が保有する金インゴットを1本ごとに台帳へ記録します。取得日・取得価額・重量・シリアルナンバーが個体単位で残り、保有と移転の履歴が後から検証できる形で保存されます。ここで述べた「記録が説明を支える」という関係を、実務の側から支えるための設計です。
取得時の実務チェックリスト
- 勘定科目:短期売買目的の資産であることを示す区分に計上していないか
- 帳簿書類:取得の日に「短期売買目的で取得した」旨の記載をしていないか
- 意思決定の記録:稟議書・取締役会議事録に保有目的(長期保有・資産保全)を記載しているか
- 売買の体制:短期売買に専ら従事する独立の部署が取得したものではないか
- 取得記録:取得日・取得価額・重量・本数・シリアルナンバーを保存しているか
- 会計方針:会計監査を受ける場合、保有目的を踏まえて会計処理を顧問の会計士・税理士と確認しているか
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本記事は、株式会社アウラムが公開情報をもとに調査し、当社の責任において作成・公開したものです。記載内容の全体について、公認会計士・税理士の水地一彰氏の監修を受けています。
監修:水地一彰(公認会計士・税理士)
本記事は、法令および通達に基づく一般的な課税関係の解釈を解説したものであり、特定の納税者の課税関係を保証するものではありません。課税関係は個別具体的な事実に基づいて判断されるため、実際の取扱いについては顧問税理士にご相談ください。記載内容は2026年8月時点の法令等に基づいています。