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マクロ・制度

骨太の方針2026に「オンチェーン金融」が入りました:
お金の側と、モノの側

読了 約5分

公開日時:2026/07/26 14:00

2026年7月21日に閣議決定された「骨太の方針2026」に、「オンチェーン金融の推進」という一文が入りました。見出しの語は報じられましたが、脚注に置かれた定義の中身は、あまり論じられていません。そこには、金融の側だけでなく「モノの側」の話が書かれています。何が決まったのか、そしてそれが動産(持ち運べる財産)にとって何を意味するのかを整理します。

金庫室の中で、政策文書とコードが一体化したホログラムを見上げるビジネスパーソンと、台座の上の金インゴットのイメージ

何が書かれたのか

正式には「経済財政運営と改革の基本方針2026」と呼ばれる文書です。「成長を支える資金供給の促進」という項に、次の一文があります。

アセットオーナーの機能向上や、家計の安定的な資産形成促進、オンチェーン金融の推進を図る。

経済財政運営と改革の基本方針2026(2026年7月21日閣議決定)

並んでいるのは、いずれも国内のお金の流れを厚くするための手段です。オンチェーン金融も、その一つとして置かれています。

そして「オンチェーン金融」には、脚注で定義が与えられています。

ブロックチェーン上で、トークン化預金、ステーブルコイン等による資金決済が、商流・物流等のデータ管理ともプログラムによって連動・一体化される金融

経済財政運営と改革の基本方針2026 脚注33

なお、同じ項が策定を求めている「成長投資を促進するための金融戦略」も、同じ7月21日に公表されています。こちらには「様々な資産のトークン化に関する制度」の点検・検討を進める旨が記されています。

政府の基本方針に「オンチェーン金融」という言葉が定義付きで入ったのは、私たちが確認した限りでは今回が初めてです。

定義の読みどころは「連動・一体化」

この定義を読むとき、私たちが注目したのは後半です。

「トークン化預金、ステーブルコイン等による資金決済」までなら、お金の側の話です。デジタル化された円で支払う、という話にとどまります。

しかし定義は、そこで止まっていません。その資金決済が「商流・物流等のデータ管理とも、プログラムによって連動・一体化される」と書かれています。

つまり、オンチェーン金融はお金の側だけでは完成しない、ということです。お金が動く瞬間に、モノの側で何が起きたのかが記録されていて、両者がプログラムで結ばれている。そういう状態を指しています。

支払いが済んだ。では、その支払いと引き換えに、何の所有権が、誰から誰へ移ったのか。それが記録されていなければ、連動のしようがありません。

お金の側のレールは、敷かれ始めています

お金の側は、日本でも動いています。銀行がトークン化した預金を発行する取り組みや、資金決済法の枠組みで発行されるステーブルコインが、実際に走り始めています。骨太の方針が具体名として「トークン化預金、ステーブルコイン」を挙げているのは、その現実を踏まえてのことだと理解しています。

では、モノの側はどうでしょうか。

モノの側には、そもそも登記がありません

不動産には登記があります。誰がその土地の持ち主で、そこにどんな担保が設定されているかを、当事者以外の第三者が確かめられます。だから金融機関は安心して担保に取り、資金を出せます。

ところが、金インゴットのような動産には、所有権を示す包括的な登記がありません。制度としてまだ用意されていないのです。この経緯に関わる民法の設計は、「金庫から動かさずにゴールドを売買する——民法184条「指図による占有移転」入門」で扱っています。

登記がない、ということは、こういうことです。モノの側には、第三者が確かめられる公の記録が存在しない。だから、お金の側でどれだけレールが整っても、連動する相手がいない。

骨太の方針の定義に照らすと、いま空いているのはここだと、私たちは考えています。

私たちがやってきたのは、モノの側の記録です

アウラムは、動産の所有権や担保の状態をブロックチェーン上に記録する「動産デジタル台帳」を開発しています(詳しくは「ブロックチェーンが変える動産管理:「動産デジタル台帳」とは何か」をご覧ください)。

2026年には、2件の技術実証を公開しました。

どちらも、モノの側の記録です。そして両方とも、お金の動きと同じ記録の中で結ばれています。骨太の方針が言う「資金決済と商流・物流データの連動・一体化」を、動産という対象で試したものだと理解しています。

なお、2件の実証はいずれもテスト環境での技術的・法的構成の検証(PoC)であり、お客様が実際に利用できるサービスの提供は2027年以降を想定しています。法的な裏づけについては複数の弁護士の助言を確認しながら準備を進めており、一部の論点は法務省へ照会中です。

まとめ

※ 本記事は公表された政府文書の紹介および当社の技術実証の事実報告であり、個別の契約・事案の法的評価は約款や事実関係によって異なります。具体的なご判断にあたっては顧問弁護士等の専門家にご確認ください。

次に読むべき記事

本記事で「モノの側の記録」と呼んだ仕組みそのものは、「ブロックチェーンが変える動産管理:「動産デジタル台帳」とは何か」で解説しています。

金庫から動かさずに所有権を移す法理と、その技術実証の全体像は、「金庫から動かさずにゴールドを売買する——民法184条「指図による占有移転」入門」をご覧ください。

実物資産をブロックチェーンで扱う際の難所を8類型で俯瞰したい方は、「RWAの「8つのオラクル問題」:ゴールドはどこが難しく、どう解くのか」をあわせてお読みください。

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